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REAL TECH FUND

【株式会社チャレナジー】
風力発電にイノベーションを起こす

2017.01.12
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原発事故から感じた時代の転換点

:このたびリアルテックファンドから出資を受けたチャレナジーですが、永田さんはチャレナジーのどこに惹かれたのですか。

永田:テクノロジーは、目的を果たす手段だと思うんです。チャレナジーは「垂直軸型マグナス風力発電機」という技術で、再生可能エネルギーにイノベーションを起こそうというベンチャー企業ですが、もしかしたら全く違う形で、明日には水力発電機を開発しているかもしれない。私はそれでも構わないと考えていて、大事なのは経営者や技術者自身が見据える目的を達成できるかどうか。もしチャレナジーが失敗したとして、私たちが「チャレナジーが挑戦して失敗したなら仕方がない」と思えるかどうかです。

清水:ありがとうございます。

永田:丸さんは、清水さんへの最初の印象は、どうでしたか。

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:言い方が適切ではないかもしれないけど、根拠のない自信が
すごいと思った(笑)。

僕の中では、少し異質な存在でしたね。

永田:清水さんは、大学院修了後に大手メーカーの開発職に就かれていますが、普通は一度社会人になってから10年くらい経験を積むと、人として尖ったところが丸くなってしまいますよね。

:そうなんです。だけど清水さんはそれを失わず、持ち続けていた。面白い人だなと思いましたね。

永田:清水さんは、どうしてチャレナジーを創業されたのですか。何かきっかけがあったのでしょうか。

清水:もう5年前になりますが、福島の原発事故が創業のきっかけですね。

永田:でも、当時は大手企業のエンジニアという立場にいましたよね。どうしてベンチャー創業というチャレンジを考えたのでしょうか。

清水:当時日本にいた多くの人が考えたと思うのですがimg_3488trimming
原発事故を目の当たりにして、原発から脱却していく必要があると思ったんです。そのためには、再生可能エネルギーをもっと活用しなければいけない。

エネルギーに関して、私たちは大きな時代の転換点にいると感じましたし、その時代に生きる自分にも何か出来ることがあるはずだ、というのが創業のきっかけです。

:まさに根拠のない自信ですね。

清水:自信というよりも使命感ですね。

 


風力発電機の固定観念を覆す

永田:創業を考えられた時点で、風力発電機を開発したご経験はあったのですか。

清水:実は全くありませんでした。大学での研究テーマは再生可能エネルギーではありませんでしたし、当時勤めていた会社でも、ファクトリーオートメーション機器を開発していましたので、風力発電機に関しては全くの素人でした。「再生可能エネルギー入門」みたいな本を買ってくるところからのスタートでしたね。当時は私自身、再生可能エネルギーの中でも太陽光を活用するのが一番良いのだろう、となんとなく思っていました。しかし、よく調べてみると、世界では太陽光よりも風力のほうがメジャーであることがわかりました。それに、エンジニアとして「自分で何かを開発したい」という想いもありました。さすがに半導体の太陽光パネルは自分でおいそれと開発出来ません。それで風力発電に注目したんです。

永田:風力発電は、市場も大きいですからね。

清水:現在の風力発電の主力はプロペラ式なんですが、これは120年以上前に発明された世界最古の風力発電機から、基本的な構造がほとんど変わっていないんです。

:風力発電が進化していないということですか。

清水:もちろん飛躍的に進化はしているのですが、進化の方向性が「恐竜」みたいだな、と思ったんです。つまり、大きいものが生き残るという世界なんですね。

%e6%b0%b8%e7%94%b03trimming永田:例えば、アメリカは国土も広いし、そういう環境であれば風力発電が大型化するというのは理解できます。

清水:風力からエネルギーを取り出すときに、プロペラ式の効率が良いというのは、既に常識です。そして、プロペラ式は大型化すればするほど費用対効果が高くなる。

:そういう意味では、適切な場所・環境下であれば、プロペラ式もある程度理に適っていると。

清水:そういうことです。しかし、日本は起伏の多い地形のために風の強さや向きが変わりやすく、さらに台風国でもあるため、破損事故が起きたり、それ以外にも騒音などの問題があって、なかなか風力発電機の普及が進んでいない。そこに可能性があるんじゃないかと思ったんです。日本のような過酷な環境でも壊れない風力発電機を作れば、世界中で通用するのではないか、と。

:日本では太陽光発電がプロモーションされていますけれど、統計データから考えれば、風力のエネルギー量の方が圧倒的に大きいはず。おそらく、再生可能エネルギーに関わる人たちもそれに気づいていたけれども、チャレンジしなかったのでしょうね。

清水:どうすれば台風でも壊れない風力発電機を作れるのかと考えていたとき、文献で「マグナス式」という技術を知りました。チャレナジーの風力発電機に採用しているのですが、プロペラの替わりに円筒を取り付けることで、円筒が気流中で自転するときに生じる「マグナス効果」を利用する方法です。

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プロペラと比べて、強風下でも安全に稼働でき、耐久性も高い風力発電機を実現できます。しかし、もう一つ考えなければいけない課題があります。それは風の向きです。日本では風向きが激しく変化する「乱流」になりやすく、風力発電機に故障が生じやすい。これを解決するには風向きの影響を受けない「垂直軸型」の風力発電機にするのが良い。つまり、「垂直軸型」かつ「マグナス式」の風力発電機であれば、風の強さや向きに影響を受けないだろうと。そこで、文献や特許などをよく調べてみると、この二つを組み合わせた風力発電機は、これまで実用化されていなかったんです。そこにチャレナジーの「垂直軸型マグナス風力発電機」が生まれたきっかけがあります。

 

 

永田:つまり「垂直軸型」であることと、「マグナス式」であることは、別の技術なのですね。それぞれの対極にある技術というのは、何なのでしょうか。

清水:「垂直軸型」の対極は、「水平軸型」です。地面の向きに対して水平に回転軸を配置する方法です。そして、「マグナス式」の対極は、例えば「プロペラ式」です。これは、その名の通りプロペラを利用する方式です。

:現在の主流は「水平軸型プロペラ式」ですね。

永田:風向変化の影響を受けないという意味では、垂直軸型のプロペラ式という解決方法もあると思うんです。チャレナジーが「マグナス式」であることの優位性は、どう理解するのが良いでしょうか。

清水:垂直軸型でプロペラ式の風力発電機もありますが、プロペラを使う以上、強風により暴走して故障に繋がってしまう可能性があります。マグナス式は、風速に応じて円筒の回転数を制御することで強風でも暴走することなく稼働できるようになりますし、万一、停止させなければいけない時には、円筒の回転を止めることで、確実に停止できます。

永田:なるほど。マグナス式でエネルギーを起こす原理は、どういうものでしょうか。

清水:身近な例では野球のカーブボールやサッカーのフリーキックと同じですね。ボールを横回転させると軌道が曲がるわけですが、これは「マグナス効果」という物理現象です。マグナス効果はボールだけではなく、円筒でも起こるんです。風の中で円筒を回すと、マグナス効果によって円筒が風に対してカーブボールのように曲がろうとします。難しい言葉を使えば、このとき円筒にはプロペラと同様に揚力が発生しているのです。この揚力を使って風車を回転させることで発電を行っています。


否定されることは、期待の裏返しでもある

:チャレナジーの垂直軸型マグナス風力発電機は、日本のどういうところで活躍が期待されるのでしょうか。

清水:以前、沖縄の宮古島にあった複数の風力発電機が台風で全壊する事故がありましたが、現在も毎年のように事故がおきています。また、日本だけでなく、世界中で台風や強風による事故が起きています。チャレナジーの風力発電機は、そうした台風下でも事故をおこすことなく、安全に発電できる可能性があります。

永田:台風でも壊れずに発電できるというのは非常に分かり易いメリットですね。チャレナジーの垂直軸型マグナス風力発電機が実用化出来れば、日本の全ての風力発電が置き換わるという話なのでしょうか。それとも台風のような悪環境下ではチャレナジーの製品が適しているけれども、それ以外のところは従来の大型なプロペラ式発電機が適しているということでしょうか。

清水:私たちとしては、従来のプロペラ式風力発電機をいずれ全て置き換えられると思っています。

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結局、プロペラ式かマグナス式かは、導入コストで決まってくる。あとは、どのくらい発電できるかという費用対効果の勝負です。当たり前ですが、私たちがプロペラ式に負けないくらいの発電量を実現し、かつコストを下げられれば、必ず普及できると考えています。逆に、台風下でも発電できたとしても、プロペラ式よりもコストが3倍掛かり、発電量は半分です、というのでは、普及は難しいでしょう。

永田:現在の課題は何でしょうか。

清水:開発人員ですね。私たちはいま、大きさが10m程度、出力10kWの量産機開発に力を注いでいます。現在はモノづくりの経験が少ない中、手さぐりで開発していますが、風力発電機メーカーの体制として、今後電気系や制御系のエンジニアが必要不可欠です。

:現在は機械系のエンジニアが主体ですからね。今回リアルテックファンドからの出資を受けて、そうした人材採用が加速できると良いですね。

永田:これはユーグレナで体感したことですが、技術を分かり易く世の中に伝えていくと、その技術や事業に感度のある人が集まってきて、応援してくれる。資金も集まりやすくなってくる。こういう良い循環を作ることがすごく大切だし、リアルテックファンドでお手伝いできるところだと思います。

清水:世の中に伝えるという観点で言うと、私たちは台風でも発電できる風力発電機という意味で「台風発電」というキーワードを出しているのですが、最近はそれが独り歩きしている気がします。

永田:チャレナジーは海外の大手メディアにも取り上げられていますね。ポジティブな意見だけではなく、ネガティブな意見もあるのですか。

清水:あるメディアでは、私たちが台風一つで日本の50年分のエネルギーを賄おうとしている、というようなセンセーショナルな取り上げられ方をしてしまいました。私たちはあくまで、台風エネルギーの一部を活用しようというコンセプトなのですが、メディアを通じて「そんなこと出来るわけがない」というもっともなツッコミもありました。

永田:ユーグレナの出雲は、ミドリムシで飛行機を飛ばすと言い続けています。それに対して、同じように否定的な意見はたくさんいただきます。出来るわけがない、と。

%e4%b8%b83trimmingユーグレナの技術顧問である私の耳にも、否定的な意見は多く入ります。

それには、結果で証明するしかないですね。でも、否定されるということは、それだけ注目されていることの裏返しでもある。絶対に無理だと言われることの方がワクワクするし、期待してくれる人も多いと思いますよ。

 

 

 


捨てたからこそ生まれる「奇跡」

永田:清水さんは、大手企業のエンジニアという立場を飛び出して、チャレナジーというベンチャー企業を興しましたよね。私たちは、清水さんのような人がチャレンジするときに、資金で困るという状況を無くすことができれば、もっとイノベーションが起こると考えています。そういう意味で、清水さんのような人が、あと何十人、何百人と増えていく社会にするには、どうすればいいのでしょうか。

清水:一言でいうと「断捨離」でしょうか。全部捨てたって良いんだと開き直った方が、何かにチャレンジすることきに気が楽になる。私はチャレナジーを創業して、ベンチャー企業というリスクを負ったわけですけど、万一失敗しても別に死ぬわけではないんですよ。一生の宝物にしようと思って収集していたギターだって、売ってしまえば二束三文だし、一か月もすれば売ったことすら忘れてしまっている。だから、一度全部捨ててゼロから始めたら、もう失うものはありません。

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:「断捨離」、いい言葉ですね。実はチャレナジーは、最初に開発した特許技術から、一度振り出しに戻って再発明した経験があるんです。当初のアイデアでは、高効率な発電ができなかったから。だけど、そこからゼロベースで開発しなおして、沖縄での実証実験を成功させた。まだまだ課題はあるけれど、これは本当に奇跡だと思うし、既成のものを捨てられるって、すごいことだと思う。

永田:そうやって何かを捨てた人には、結局誰かが応援してくれるんだろうな、と思いますね。リアルテックファンドもチャレナジーが起こすイノベーションを全力で応援したいと思います。
本日はありがとうございました。