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REAL TECH FUND

【シンクランド株式会社】
生産技術のイノベーターがつくる新しい未来

2017.01.25
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「光」と「電気」を高いレベルで融合する

山家:最初にシンクランドがどういう会社なのか、説明していただけますか。

宮地:シンクランドは、光学と電気の2つのコア技術を持っている会社です。光と電気という異なる領域を融合することによって、様々な事業展開を行なっています。その中の一つが、2016年8月に国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、NEDO)の「研究開発型ベンチャー支援事業/シード期の研究開発型ベンチャーに対する事業化支援(以下、STS)」に採択されたテーマでもある「光渦レーザー」を用いたマイクロニードルの事業化です。これは千葉大学の尾松教授らが発明された技術であり、シンクランドはその特許の独占実施権を受けています。大学の尖った技術をシンクランドの技術と融合して、化学反応を起こし、新たな製品を創っていく。いわゆるイノベーションを起こす役割を我々が担っていければいいなと思っています。

山家:光と電気という2つの異なる技術を融合するというお話がありましたが、この難しさだったり、御社が強みを置かれるポイントというのは、どこにあるのでしょうか。

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宮地:光の技術を持っている会社、例えばレンズを作るのが上手い会社は、社会に既に存在しています。電気の制御基板を作るところも色々な企業があります。特に、今まで日本の産業を支えてきた電気関係の企業はたくさんありますよね。しかし、この2つの技術を高いレベルで持っている会社というのは、実は珍しいんです。光と電気の両方に精通した技術者がいる、というのはシンクランドの強みだと思いますね。

及川:シンクランドには、最先端の光通信技術に関わってきた技術者が多くいます。私もその一人です。最先端の光通信技術は、光と電気の両方を高いレベルで理解し、最適な製品をソリューションとして提供していく世界です。例えば、光デバイスは電気で動かすものなので、光の良さをどうしたら引き出せるかを理解した上で、電気のことも分かっていなければいけない。さらには、電気にもアナログやデジタルがあり、光デバイスにもレーザーやレンズがあるので、様々なデバイスや技術を融合させて最適化する、ということをしなければいけないわけです。最先端の光通信技術に関わってきた私たちには、必然的に光と電気の両方を最適化する技術を持っています。

長谷川:光学や電気技術における優位性というのは、特許性のある技術のようにYesかNoで判別できるものとは少し異なっていて、やろうと思えば皆できるはずだけど、上手くできないものを総合的に高いレベルで実現する。そういうエンジニアリングの要素だと思っています。

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及川:エンジニアリングの側面も大きいと思います。私たちはお客様へカウンタープロポーザルを出す、ということを必ず意識しています。例えば、光の分野しかご存知ない方には、電気回路の観点から違う提案を出す、という具合です。光と電気各々だけではなくて、より上位概念の提案をするということが重要です。

長谷川:そういう意味で言うと、今回NEDOに採択された光渦レーザーによるマイクロニードルというのは、尾松教授の光渦レーザー技術に、シンクランドの光学・電気電子の技術が加わることで初めて実現出来る、ということですね。光渦レーザーによるマイクロニードルとは一体どういうものか説明していただけますか。

 


「光の渦」でつくる新しいマイクロニードル

宮地:通常のレーザーとは違う、螺旋形のレーザーが光渦レーザーです。その名の通り、レーザー光が渦を巻いた状態で、竜巻や台風の目のように中心部が空洞になっていることが大きな特徴です。これをシリコンや金属などの材料に照射したところ、非常に微細な針になることを千葉大学が発見しました。これが、シンクランドが実用化を目指す光渦レーザーによる光渦マイクロニードルです。

山家:マイクロニードルという技術は、これまでも化粧品等に用いられていると思いますが、御社の光渦マイクロニードルは何が違うのでしょうか。

宮地:従来のマイクロニードルは、基本的に金型・鋳型で成型されています。これによって、例えば製造するニードルの本数に制限があったり、用途に合わせてニードルの形状を変えることが難しいという課題がありました。シンクランドの光渦マイクロニードルはレーザーで製造するために金型が不要で、レーザーのパワーなどを制御することで針の形状や長さを柔軟に設計できます。もう一つの大きな特徴は、光渦レーザーで針を作製した後、光渦ではない通常のレーザーを照射させる事で、針の中心部を空洞にできるんです。これを中空マイクロニードルと呼んでいます。

山家:マイクロニードルが中空であると、どういったメリットや可能性が生まれるのでしょうか。

宮地:NEDOのSTSに採択いただいた開発テーマとして、シンクランドでは光渦マイクロニードルによるインスリン注射針の開発を行っています。光渦マイクロニードルの中空部分からインスリンを適量注入することを目指しています。

長谷川:従来のマイクロニードルは中空ではないため、針の表面に対象物を塗って、それを体内に注入しようとしていた。これではなかなか必要量を注入できませんよね。

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宮地:インスリン注射針としての光渦マイクロニードルの優位性は他にもあります。一つは、無痛針であるということです。私たちが開発目標としているのは、外径が100マイクロメートル以下のニードルです。これは他の研究成果でも発表されているのですが、人間が痛みによるストレスを感じない本当の無痛針であるためには、外径が100マイクロメートル以下であることが必要です。現在、世界で一番小さい針と言われているものでも、まだ外径180マイクロメートルです。ここをブレイクスルーしたいと考えています。もう一つの特徴は、生体吸収性材料であるヒアルロン酸などで成型されたマイクロニードルであることです。従来のインスリン注射というのは、金属やプラスチックで作られるため、回収が必要になりますし、注射した後の針を特殊な方法で処理する必要があり、簡単に廃棄が出来ませんでした。シンクランドの光渦マイクロニードルは、生体内に吸収されるヒアルロン酸などで形成されているため、針を抜いて、処理をして、廃棄するという作業をすることなく、自然に体内で消失していきます。無痛かつ生体吸収が可能で、中空による適量注入が出来るのは、シンクランドの光渦マイクロニードルだけです。

長谷川:ヒアルロン酸などの生体吸収性材料をマイクロニードル加工するというのは、従来もあったアプローチなのでしょうか。

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及川:ヒアルロン酸などをマイクロニードル加工するという技術は、一部のベンチャー企業でも開発されています。但し、シンクランドの大きな優位性は、先ほどお話ししたように、無痛かつ生体吸収可能であり、中空による適量注入が出来るという三点全ての特徴を有していることです。また、シンクランドの光渦レーザーは材料に依存せずにマイクロニードル加工ができます。例えば、半導体や金属でも加工が可能です。

山家:マイクロニードルで、インスリンや化粧品のように皮内に対象物を注入する用途はイメージがし易いと思うのですが、半導体や金属をマイクロニードル加工することに、どのような可能性があるのでしょうか。

宮地:例えば、材料の表面にマイクロニードルを成形することで撥水効果が生まれたり、材料の摩擦係数、つまり材料の滑りやすさを変化させることができます。これには、素材メーカーや精密加工メーカーに興味を持っていただいています。

長谷川:マイクロニードル自体が技術的に優れているというわけではなく、マイクロニードルを製造するために最先端のレーザー技術を理解し、量産に用いることができるというのが、シンクランドのコア技術ですね。


「熱」で集まった経営チーム

及川:おっしゃる通りです。私たちは「生産技術のイノベーター」であることをビジョンに掲げています。

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山家:いまビジョンという話がありましたが、シンクランドを創業するきっかけや会社としてのビジョンを教えていただけますか。

宮地:私はこれまでも複数の光通信関連企業で仕事をしてきました。比較的、規模が大きな企業だったということもあって、直接顧客の声を聞くというか、自分が携わっている製品が本当に顧客の価値になっているのかどうか、その実感を得ることがなかなか難しかった。起業することで、自分の仕事の価値というものを、よりリアルに感じたかったというのが創業のきっかけですね。社名のシンクランドは、英語の“Think”と”Lands”から来ています。つまり、考えたことや思ったこと(Think)を、活発な議論を通じて実現できる場所(Lands)を提供できる会社であり続けたい。

山家:CTOである及川さんのような経験豊富なエンジニアが参画されていますが、そうしたチームビルディングの経緯を教えていただけますか。

宮地:私が前職にいた頃から、お互い別の会社に所属していましたけれども、及川とは面識がありました。シンクランドを創業した年の暮れに、偶然、互いの近況を話す機会があったんです。私としては、会社を成長させるためにも、シンクランドのコア技術である光学と電気を深く理解し、会社の柱になるようなメンバーが必要だと感じていた時期でした。その数か月後に、及川が前職を退職するという話を聞いて、これは絶対シンクランドに参画してほしいと。

山家:及川さんは、どういう想いでシンクランドというベンチャー企業に参画することに決められたのですか。

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及川:私は元々、光通信大手の研究所や事業部で仕事をしてきました。いわゆる大企業と呼ばれる企業でしたが、そこを飛び出していく人も多いという企業文化がありました。それで私も当時の同僚が創業したベンチャー企業に参画していたのですが、そこで宮地から声を掛けてもらいました。当時のベンチャー企業もある程度成長できたというタイミングで、自分としても新しいチャレンジがしたいと考えていたところでした。宮地の誘いは、かなりアグレッシブでしたね(笑)。新しいことをどんどんやっていきたいと。このアグレッシブな姿勢には非常に共感しました。

宮地:人から何か話が来た時には、まずなんでも「はい」と言いますからね(笑)。

及川:普通の人は「はい」と言うことに丸一日掛かるのですが、宮地は即座に「はい」と言ってから方法を考える。この意思決定のスピードは凄いと思います。このアグレッシブさ、スピード感、そしてシンクランドへの宮地の想いに共感して、ついていこうと決めましたね。宮地の夢を叶えることが私の夢で、それが私のベンチャースピリットですね。

山家:リアルテックファンドは創業者のパッション、「熱」というものを投資において重要視しますが、まさに宮地さんの「熱」でチームが作られていったのですね。リアルテックファンドとの出会いは、どのようなきっかけだったのでしょうか。


技術だけでは、ビジネスにできない

宮地:ユーグレナとはオフィスが同じビルということもあって、以前から接点がありました。ただ、当時は光渦レーザーを使って具体的に何をするのかというのが明確ではない時期で、ベンチャー企業としての先輩であるユーグレナと何か協業が出来ないだろうかということで話をさせていただきました。その後、ユーグレナからリアルテックファンドを紹介していただきましたね。

長谷川:当時は光渦マイクロニードルもone of themでしたね。本当にたくさんのアイディアがありました。光渦で何をするか分からないけど、面白そうだなと。ただ、本当にこれはニーズがあるのかという点は、本人たちも含めて誰一人分からない状態でした。

山家:光渦レーザーでマイクロニードルを形成するというアイディアは、どこから生まれたのですか。

宮地:光渦レーザーで針が出来るということは、以前に尾松教授から聞いていました。当時は、金属で針を形成していましたが、私たちから先生にもいくつか提案をする中で、ヒアルロン酸でマイクロニードルを形成出来れば面白いんじゃないかと。そこで、あるベンチャー・ピッチイベントでこのアイディアをプレゼンしたところ、多くの人に興味を持っていただいたんです。

長谷川:技術が面白くてもビジネスとして成立しない、というベンチャー企業は多いです。そういう意味で、シンクランドと最初に出会った頃は、技術自体の可能性というものは高く評価できるけども、事業としての実現性に説得力がなかった。そこをブレイクスルーして、光渦マイクロニードルを化粧品やインスリン注射に応用するというところまで持っていったことは素晴らしいと思います。

宮地:リアルテックファンドから投資を受ける前にディスカッションが出来たことで、やはり自分たちは技術だけをアピールするのではなく、何が最終製品になるのか、顧客のニーズは何なのかということを伝えなければいけないと気付きましたね。

山家:他のVCにも資金調達の相談をされたのですか?

宮地:複数のVCと話をしましたし、技術は面白いという意見もいただきました。ただ、リアルテックファンドと大きく違うのは、技術の根本的な部分への理解度ですね。結局、技術を理解いただけないと、その応用可能性が理解できません。だからハンズオンも出来ない。リアルテックファンドは、技術を事業として成立させるために何が必要かという経営者の目線に立っていただけるVCだと思います。

及川:ここまでベンチャーの話を聞いてくれるVCは、他に無いと思いますね。自分たちが技術を理解するまで、とことん話を聞いてくれる。その上で、その技術をどう分かり易く伝えるかというところまでアドバイスをしていただけるのは非常にありがたいです。

長谷川:光学や電気電子に豊富な経験をお持ちだからこそ、自分たちに出来ることが多く、その全てを伝えようとしてしまう。それだと技術を知らない人には情報量が多すぎて、理解が進みません。ビジネスとして進めるためには、ある程度情報量をコントロールして、説明のアプローチを変えていかなくてはいけません。その点は、何度も議論をしてブラッシュアップしましたね。


技術を社会実装する「生産技術のイノベーター」

山家:シンクランドは10年後、20年後にどのような未来を実現したいのでしょうか。

宮地:1つのベンチャー企業が、1つの技術だけで売上100億円を達成できる確率は、決して大きくないと思うんです。ただ、売上10億円、20億円の企業であれば作れるかもしれない。シンクランドは「生産技術のイノベーター」として、例えば光渦レーザーのような技術の種を短期間で成長させて、売上10億円規模の事業に育てることができる。これを別な技術で10個創っていくというイメージです。世の中に必要とされる技術を一つでも多く社会に実装していきたいと考えています。

長谷川:光学や電気電子の技術は、これからどんどん新しいものが出てきます。でも、それをチューニングして、量産化できる企業というのは実は少ない。やはり、「生産技術のイノベーター」というのがポイントですよね。

山家:最後に、宮地さん、及川さんから、大学発ベンチャーや研究開発型のベンチャー企業に対してメッセージをお願いします。

及川:研究開発において重要なのは、welcome to trouble、つまりトラブルや困難に感謝することです。徹底的にトラブルを解決しようとするから、技術や顧客の理解が進む。もう一つは、トラブルの原因が分かったとき、その解決策は特許化するチャンスになり得る。これはもしかしたら、会社の競争力に繋がるかもしれない。もちろんトラブルで辛い思いをしますが、また違った目線でトラブルを捉えると良いと思います。

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宮地:成功するベンチャー企業の経営者は、最初から一流の経営者であったわけではないと思います。新しい分野を開拓して進んでいたら、周りに誰もいなくなって、結果的に一流と呼ばれるようになったということだと思うんです。最初は不勉強でも、新しい分野にチャレンジすることでトップになれる。これを感覚として持ってほしいと思います。もう一つは、言霊というか、想いを言葉にして口に出すことですね。シンクランドを創業したとき、私はいろいろな人に「医療機器をやりたい」と言っていました。10人中9人はネガティブな反応でも、1人は興味を持ってくれて、次のアクションに繋げてくれる。シンクランドが光渦マイクロニードルでインスリン注射針を開発しているのは、まさにこの言霊だったと思います。

山家:シンクランドの想いが実現できるように一緒に頑張っていきましょう。本日はありがとうございました。